S1000RR試乗インプレ②扱い易いスーパースポーツというBMWの色
ポテンシャルと扱いやすさの両立
普通、207馬力のバイクと聞けば臆するところではありますが、BMWのS1000RRは意外にもフレンドリーに仕上がっています。
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動力性能を追い求めるのは数値的には頭打ちになりつつあるし、後は扱いやすさやブランドの特色、そこにある独自とも言える価値や楽しさ、そういった物が大事ですね。
試乗インプレ①からの続き。
試乗インプレ続編としてライディングプレジャーの追及について解説していきます。
諸元とスペック
1000ccのエンジンはBMWシフトカムの採用で207psを発揮、回転数とアクセル開度でカムを切り替えるタイプでレブリミットは14600rpm、途方もないポテンシャルです。
タイヤサイズはフロントが120/70R17 リアが200/55R17
旧型はリアが190/55R17だったりして、モデルチェンジにより変更があります。スーパーバイククラスの1000cc4気筒で200馬力前後のモデルでは190幅か、200幅が奢られていて、高速コーナーでのトラクションがための数値なのでしょう。
ライディングモードとシフトアシスト
ライディングモードはレイン、ロード、ダイナミック、レースの4種類が用意されていて、レインは明らかにレスポンスがダルな設定、アクセルが重く鈍くなったように感じさせ、フルパワーを封印します。
ロードが待ち乗りで扱いやすいモードで、レスポンスは十分に良く加速の伸びも良いと感じるものの、アクセルオフでの挙動のギクシャクさが出ないように躾けられている感じ。200馬力の神経質さを感じさせず、そして普通に速い。
ダイナミックは明らかなレスポンスの向上があり、ハイスロ化された感じに。アクセルを握る手の平とリアタイヤの転がりはつながったかのように車体を蹴りだします。怒涛の加速を出来る反面、SSに乗り慣れていないと一瞬ビビッてアクセルを戻しちゃったりすると、エンブレがグワっとかかってつんのめり、また慌ててアクセル開けて仰け反って加速してを繰り返し、ギクシャクしがちになるかもしれません。
レースモードはトラクションコントロールなどの設定が変わり、レスポンスの良さが仇になってハイサイドなどリアのグリップの限界を超えてしまうリスクを含むことになります。サーキット限定であり、発進時のウィリー・フロントリフトなど御しきれないとか腕に覚えが無ければ使わないほうが良いでしょう。
Mパッケージはスポーツシート、車高調整機構ウイリーコントロール、スライドコントロールなどという一般的に聞きなれないサーキット以外で出番のない機能があります。一応説明書をしっかりと読めば使えるとは思いますが、試して見ようでトラブルにならないように注意が必要です。
オプションではありますが、ダイナミック・ダンピング・コントロール(DDC)いわゆるアダプティブサスペンション・電子制御サス装着もあり、乗り心地も設定変更可能です。しかし、サスストロークがそもそも長くないこともあってか、柔らかい方向への変更はあまり感じ取りにくく、ハード方向へは硬められたのを感じ取り易い設定だと思います。
ライディングの習熟度にあわせてモード設定をいじったりも出来るし、走りを楽しむ場所・サーキットやワインディングロードなどとの往復であればレインにして流す、というのも良い。
ユーザーモードでいくつか設定できるので、初心者でも穏やかさの設定をベースとして一部クイックにしてギミックとして楽しめるし、エキスパートのベテランであれば走るコース・ステージごとに設定を変えるというのも良いかもしれません。あの峠では1、あの周遊道路では2、みたいなイメージですね。
シフトアシストプロなるクラッチレス変速が出来るもので、発進と停止以外はクラッチ握らずにイケると謳うもの。しかし、やはり低いギアではシフトショックは大きく、半クラッチ使ったほうが良いかも。
ただ、スタートダッシュで全開加速からのシフトアップではクラッチ切って人間の操作でギア入れてまたつなぐより、単純に蹴り上げてシフトアシストで変速した方が速い。どうせ半クラ入れてもそれなりのショックは伝わるし速度的な面での加速をシームレスにアクセルも開けっ放しでOkなら、こういうSSでは有効だと思い知らされたりもするかもしれません。
フレンドリーで上手くなったと感じさせてくれる
S1000RRはスーパースポーツの中ではフレンドリーな部類。
シート高は824mm、足つきはそこそこキツイやつですが、シート形状は前側を狭くしてありなんとかならないこともないはず。シートの後端部分はそこそこ厚くクッションがあり、巡航体制に入るときのポジションはそこ、ってのがあります。
ポジションも前傾できついものの、意外と慣れで何とかなります。
またがってポジションを取った時に、大きく前傾すると腕がタンクに当たったり、手首の角度が変になったり、肘が硬くなったりしがちです。準備運動などで上半身をほぐしてからとか、信号待ちや小休止を取る時には上に腕を伸ばすようなストレッチをしたり、肩を回したりして緊張を取るように心がけましょう。
特に右手はアクセルワークとブレーキングに影響してくるので、手首・肘などをしっかりと柔らかくして、こわばらないように操作できるようにしときましょう。
ブレーキーの性能は高く、BMWの美点として挙げられますね。ブレーキの効きの良さもタッチの正確さも良く、そしてABSもスポーツ走行に対応したもので、コーナリング中のブレーキなどにも対応していると言います。
サーキットでの酷使にも耐えられる最高品質の装備で固められていて、そしてそれを扱いやすくまとめています。
乗り味的にはそこまでサスが突っ張るようなハードさもなく、乗り心地も悪くはありません。
タンクへのニーグリップが馴染み、足のつま先・踵・踝辺りの3点がステップとフィットすると、ちょっとしたコーナーでもそこそこ楽しく走れるようになります。
フレンドリーさが美点として際立ち、すこしライディングが上達したと感じさせてくれるバイクです。タイヤを端まで使うようなライディングが出来なくても、よくわからないけどなんだか気持ちが良いコーナリングのひとつで、凄く満足感が得られるような感じです。
前述のようにライディングモードでなるべくギクシャクしないように設定したり、加速で仰け反ってアクセルのオンオフに影響することがあるなどを考えての操作をすると、バイクとの一体感が徐々に高まっていくのを感じやすいですし、そして1000ccもあるのになんだかコンパクトなバイクに乗っているように錯覚し始めたりもします。
リアタイヤ周りの路面状況の解像度が上がる、みたいな感覚も起こり、こういうラインをトレース出来たらもっと楽しそう・気持ちよさそうとか、バイクが教えてくれているようにも感じるんです。
その究極を突き詰めればグランプリライダーになるでしょうし、そして峠の覇者みたいなものになるのでしょうが、その手前の領域でも楽しめてバイクとの一体感のゾーンに入れたりするのが楽しいバイクのように思います。
危険を冒して走るだけでは到達できないゾーンに、安全を担保に速さを手繰り寄せ手が届きそうになる、そう思わせてくれます。最後の手が届くかは乗り手次第という余地もあるのがバイクの醍醐味でしょうか。
究極の発展系もある
S1000RRをベースに、SBKで勝つためのマシンM1000RRが2021年に登場していて、約380万円~となっています。軽量化を極めたコンペティショングレードとなると約500万円ですね。
馬力的には212馬力、レッドゾーンは15100回転になっていて、0-100キロ加速は3.1秒、時速100キロまで3.1秒で到達して、そのまま最高速306キロまで加速する究極の1台です。
カウルにはトレンドではあるウィングレットが装着されていて、超高速域での空力を極めています。
ベースモデルの2倍ともなると、躊躇する人も多いでしょうし、きっとS1000RRでも十分以上に速くて楽しめるでしょう。
派生車種と価格帯
このエンジン・車体の良さでツアラーを作ったら…とか思う方もいるかもしれません。
そういった方にはS1000RRをベースにクロスオーバーに仕立てたS1000XRがあります。
フェアリングを取っ払ってストリートファイターにして峠でブイブイ言わせたい…とかだと、S1000R(アール一個)のアップライトなポジションのロードスターがあります。
どちらもエンジンをディチューンして156馬力となっていて、十分以上にハイスペックであり、そして特徴・個性を与えている物の…多分、S1000RR(アール二つね)に乗ってしまうと多分そちらに惹かれてしまうのよね。
M1000RRを含めるとすれば4兄弟になるのですが、やはりS1000RRがダントツに売れていて人気だったりします。中古バイク相場でも酷使される使い方のSSの割りにかなり高値安定していたりもするので、中古よりか新車のほうが結果的に割安お得な気もします。
BMW全体のラインナップにおいてもS1000RRはレーサーラインとしてモトラッドを代表するモデルにまでなっていて、アドヴェンチャーモデルの筆頭であるR1250GSなどと並ぶとも言えそうな存在感です。
取り敢えずサーキット走行を趣味にしようかなって人が買っといても間違いの無いチョイスでもあります。
そして、サーキットへの自走はもちろん、ツーリングにも使えないこともない。その辺は電子制御の助けと扱いやすさあってのものだとは思いますが、ツーリングメインにするならほかのバイクの方が良いとは思うものの、意外と長距離も走れないこともない。
231万円~となっていますが、電子制御のオプションや、Mパッケージなどのカスタマイズオプションをつけたり、電子制御サスのDDC付きにすると300万円程度になるのが相場感です。初期(2010)のつるしは169万円~となっていたのを考えると値上がりしていますが、装備の充実と性能向上は間違いないし、コスパは悪くないとオススメしておきたいと思います。